ものづくり補助事業成果事例集
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当製麺所は、奈良県の過疎対策・地場産業対策の一貫として、三輪素麵生産家拡大推進を受け、昭和59年に創業。以来、三輪素麺工業組合員として当地、黒滝村にて三輪素麺や手延べうどん・そばの製造・販売を行っている。黒滝村は吉野山地に囲まれた林業の町として知られている。当地で創業した理由は、創業者の出身地という事もあるが、特に冬季(12月から3月)は「乾燥した空気」「冷たい水」という気候風土であり、これ以上望めない程素麺作りに適した自然環境でもあったからである。当製麺所は組合への卸が約8割であるが、残り2割の小売は贈答先の口コミを中心にDM、自社カタログ、FAX等の直売のみで展開。お客様には手間を掛けさせてしまうが「その取り寄せ手間が逆に良い」と逆に好評をいただいている。今後もその「取り寄せ手間」に報いる為、黒滝村の自然環境の下で生産量の安定と品質維持に努めたいと考えている。2021年現在、素麺の需要はコロナ禍による巣籠もり需要も重なって非常に高騰しており、2015年頃とは真逆の在庫不足という現象が起きている。各生産者は組合オーダーのロット確保で手一杯になっており、他商品の生産・開発を行う余力が無い程であるが、業界全体が抱える大きな課題も露見していた。一生産者に留まらず、奈良県三輪素麺工業協同組合の副理事長を担う者(当製麺所代表が兼任)として、三輪素麺生産者あるいは全国の素麺業界全体が抱える状況・課題を常に意識し、対策・解決策の模索を続ける。業種分類食料品製造業事業内容登録商標三輪素麺、手延べ■うどん、手延べそばの製造販売代表者名代表 尾上 公一所在地奈良県吉野郡黒滝村中戸 957-1連絡先TEL:0747-62-2327/FAX:0747-62-2239素麺需要の高騰とはいえ、過去に無い程突出している訳ではなく、生産者の廃業などで供給量が減少している事も在庫不足の大きな一因であり、今後の業界の展望を思えば、需要高騰を手放しに喜べない状況である。他業種でも同様であるが、後継者・なり手の人手不足は素麺業界でも深刻であり、如何に人材を呼ぶか、如何に人手不足を機械化でカバーして生産量を拡大維持するか等、課題は山積みである。今後も組合内部、あるいは全国の素麺産地と連携を取りながら、業界全体の問題として解決・改善に取り組みたい。いくら需要が高騰しようとも、一過性の可能性も高く、また、「素麺は夏の食べ物」というイメージは依然根強く残っている。冬季の市場開拓は慢性的な課題となっており、冬季・通年商品の開発も急務であるが、アプローチを変え、「冬の素麺消費」を促すのも一手である。素麺生産者は実のところ夏ではなく冬に素麺を食べる事が多い。例えば鍋料理の〆として、うどんの代わりに乾麺の状態でそのまま素麺を入れるのである。三輪素麺は元々強力粉を多用しており、煮崩れしにくく、冷やし素麺も良いが、鍋でこそ生きる麺である、とも言える。このような、一般では余り知られていない、生産者達が知る「裏レシピ」を公開し、消費者の「冬には食べられない」という誤解を解き、うどんの代わりに消費してもらう事で、シェアの拡大を狙う。ホームページなしE-MAILonoue@m5.kcn.ne.jp尾上製麺所の概要黒滝村発「まごが喜ぶ三輪そうめん」三輪素麺の課題と戦略後継者・なり手不足への対策/素麺生産者が「冬」に食べる裏レシピ公開46【課題】 後継者・なり手不足【戦略】 冬季の市場開拓尾上製麺所

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