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IT活用研究会

第4回IT活用研究会 詳細レポート

【リアルな経営の質がネットを活かす】

有馬温泉御所坊の創業は建久二年(1191年)と言われている。源頼朝が鎌倉幕府を開く一年前にあたる。仁西上人が、天災で荒廃していた有馬温泉を復興するために、十ニ坊の湯宿を設けたのが始まりだそうだ。このあたりが恐らく日本最古の宿ではないかと言われる所以である。
この御所坊の主人、金井啓修氏からはそのような格式ばった気負いや老舗の旦那様と言う雰囲気は感じられない。むしろ飄々とされているようさえ受け止められる。
  金井氏と話していて随所に出るのは、相反するものを受け入れるという考えである。このことが、今回、IT活用研究会に講師としてお呼びしたきっかけになっている。インターネットは情報受発信の手段として大きな可能性を持っている。しかし、この可能性を引き出すのは、ベースにリアルな部分での価値観や経営観を持っていなければ、経営の有益な手段として活用すことは出来ないのではないかと言うのが今回の研究会のテーマである。


●インターネットの進展で、リアルな旅館業はネットワーク業に変容する

今の時代は高度情報化社会が急速に進展していると言われている。私たちは漠然とは、『情報化』というものが分かってはいるが、いざそれが経営にどのようなインパクトを与えるのかということは、なかなかつかみきれないものである。 金井氏はこの『情報化』というものをいくつかのキーワードを駆使して、自分たちの旅館業にどのような影響を与えたのか、あるいはそのような中でどのような情報を発信することが大切なのかと言うことを分かり易く説明していただいた。

「高度情報化ということがありますけども、コンピュータのインターネットもそうでしょうし、口コミもそうでしょうし、週刊誌や新聞や雑誌やそういうありとあらゆるものが、一つの情報の、一つのツールだと思います。そういう情報が氾濫していくと、どういうふうに社会は変わって行くかといった、その、社会が変わっていく方向で、どうやってその情報を発信すると、今度は逆にそういう人たちがその情報を欲しがって、進んでいくか」
 
金井氏はまず『情報化』というものをこのようにとらえている。
 
「高度情報化社会になると何やねん、というと、『流動化』といって、すごいサイクルが速いんですよね。サイクルが速いということは何やねん、というと、一つ流行って、注目を浴びても、すぐまた次の新しいものが出てきて、どんどんお客さん自身も変わっていく。要するに、商品寿命が短くなってくる。短くなっていくとどうしたらええねん、ということで、いろんなものを『ネットワーク化』していくというのがあります」

この話を聞いただけで、ひらめくものがあった。最近、協同組合の間でもネットワークを組もうとか、どうしてネットワークを組むんだという議論が活発になっている。しかし、なぜ、ネットワークを組むのかと言う本質の問いかけには明快な回答は得られていない。なんとなくネットワークを組めば新しい経営の動きが出来るのではないか、ひょっとして新しい顧客が見つかって売上が上がるのではないか、現状では行き詰まりだから新しいきっかけが欲しい、というような半信半疑でのネットワークづくりが横行しているのではないか。金井氏は御所坊の事例を引き出して明快に語ってくれる。


「例えば御所坊という旅館を経営していくと、いろんなネットワークが必要になってきます。そのネットワークの一つに、ここに「ルレ・シャトー」ってフランス語あるんですけども、ちょっとこれをクリックしてみると、「リレー」、お城のリレーですね。
もともと、フランスのワインなんかは“シャトーなんとか”と言うように、お城の城主がだいたい自分の土地を持っていて、そこにブドウ畑を作って、またそのお城に人を泊める。そもそもフランスの町のあちこちに、城主がホテルを経営していたわけですね。そういうことでお城の人たちのネットワークというのがあるんですね」


日本の旅館も旅行代理店のネットワークに入ってはいるが、これからは営業窓口としてのネットワークよりも、同じテイストなり価値観をもつ顧客を求めている旅館やホテル、あるいはレストランなどのネットワークを国内に限らず広げていくところに経営基盤拡充のヒントがありそうである。このネットワーク化が進むと、それぞれの関係はオープンな方向に展開していくと金井氏は語る。

それともう一つ、日本にはだいたい3万軒ぐらい旅館があるんですけども、一つの試みとして、ちょっと個性的な旅館とネットワークを組もうとしました。
ここを押すとですね、それぞれ、これは湯河原の石葉という旅館なんですが、これを押すとあっちこっちの旅館に、こう、飛んでいきます。これは不特定で飛びます。要するにこの旅館この旅館で、お客さんを集めてくれるといいだろうと。

そういう風にネットワークができるといろんな関係が生じてきますから、そういう国内の旅館を訪ねに日本国内を回ることもあれば、海外に行くこともある。そうすると従来の有馬温泉の旅館だけの関係からどんどん広がってきまして、『ボーダレス化』とか『開放化』になっていきます」